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マルチ商法の中途解約

マルチ商法の中途解約は複雑ですが、一方で急ぐ必要があります。破綻が始まってからでは手遅れです。

マルチの中途解約とは

連鎖販売契約では、クーリングオフ期間が経過した後でも、契約の期間内であれば、加入者は将来に向かって契約を解除できます。つまり、たとえば連鎖販売契約の期間が5年の長期にわたって定められていても、加入者が自由に組織から退会することが、法律によって保障されたものです。ただし加入者は「店舗等によらない個人」に限られます。

「将来に向かつて」とは、効果が遡及しないことを意味します。たとえば5年間の契約を契約締結後1年たって解除した場合、クーリングオフや取消では、はじめに遡って(つまり5年分まるまるひっくるめて)解除されます。しかし中途解約の場合は、解約した後の4年分が解除され、それ以前の1年分の契約は有効に存続したと評価されます。

クーリングオフのように一方的に行使できます。契約の取消しとは異なり、中途解約権の行使に特別な要件は必要ありません。比較的行使しやすい権利である反面、一定の精算義務が伴います。その精算ルールなどについては、以下に申し述べます。

購入済商品の返品

中途解約がされた場合、それ以前に加入者が商品を購入している場合は、その商品をどうするかが問題となります。中途解約する前に購入した商品だったら、その分の代金は支払う義務があるようにも思えます。

しかし特定商取引法では、一定の条件下で、その連鎖販売契約が解除されるまでに締結した商品販売契約についても解除できる旨を規定してあります。つまり商品の返品が認められます。この場合の商品の購入は、連鎖販売を行うものから直接購入した場合はもちろん、その者からあっせんを受けて第三者から購入した場合も含めます。

以下にある一定条件に該当しなかったら全く返品できないという訳ではなく、民法や商法の一般原則、あるいは当事者同士の特約に基づく返品が排除されている訳ではありません。

返品が可能かどうかは、通常販売されている商品の最小単位を基準として判断されます。たとえば、10パックで1セットの化粧品のうち1パックだけ消費してしまったら、10パック全部が返品できなくなる訳ではありません。返品できないのは消費した1パックだけで、残りの9パックは返品できます。

購入済商品返品の条件

購入済商品を返品できる「一定の条件」は次の通りです。

  • 連鎖販売契約締結後1年以内の加入者(店舗等によらない個人)であること
    取引条件の変更に係る連鎖販売契約については、販売組織に入会後も継続的に締結されるものですので、適用除外とされています。
  • 商品(権利を含む)の引渡しを受けた日から90日以内であること
    「商品」とはこの場合、その連鎖販売業に関して販売される商品すべてを指します。加入者が特定負担として購入する商品か、その後追加的に購入する商品かは問われません。
  • その商品を、まだ再販売していないこと
    一度商品を再販売してしまうと、仮にその商品が自らのもとに返品されてきても、もはや自分が購入した者(組織の上位者など)に対して返品できなくなります。
  • その商品を、使用・消費していないこと
    この場合の「使用または消費」は、加入者が主体的な判断で行ったものである必要があります。その商品の販売を行った者が、加入者に「ちょっと試してみましょう」などと誘導し、その商品を使用または消費させたような場合は、「使用または消費した」とは評価されません。この場合、加入者はその商品販売契約を解除できます。
  • 加入者の責めに帰すべき事由により、その商品の全部または一部を滅失したり毀損したりしていないこと

しばしば問題となるのが、90日ルールです。高額収入の夢から覚め、解約を目指し始めた頃には、

90日がとっくに過ぎていた

というご相談をいただくことがあります。そのような場合、当職では状況に応じて法律以外の方法を含め検討しております。

返品した際の精算ルール

商品販売契約が解除された場合、つまり返品が可能な場合は、連鎖販売契約が解除された場合とは別の精算ルールが規定されています。趣旨は、連鎖販売契約解除のものと同じで、事前に損害賠償額の予定や違約金の定めがあっても、その額に法律で上限を設けることによって、法外な解約料などの請求を防止するものです。あくまで上限額の規定であって、商品の販売を行った者に上限額いっぱいの金額を請求できる権利を与えるものではないという点も、同じです。

商品販売契約が解除された場合の精算ルールは、次の通りです。

商品が返還された場合または引渡し前の場合

  1. 商品の販売価格の10%に相当する額
  2. 法定利率による遅延損害金

商品が返還されない場合

  1. 商品の販売価格に相当する額
  2. 法定利率による遅延損害金

統括者の連帯責任

商品販売契約が解除された場合、加入者はその「商品の販売を行った者」に対して、商品を返還し、支払い済代金の返還請求をします。この「商品の販売を行った者」が統括者である場合もありますが、そうでない場合もあります。

後者の場合、つまり「商品の販売を行った者」と統括者が別の場合、統括者が連帯して債務を弁済する責めを負う旨が、法に規定されています。「商品の販売を行った者」が受け取った商品代金を加入者に返済する債務を、統括者は一緒になって負担しなければなりません。

加入者から見れば、購入代金の返還を「商品の販売を行った者」に対しても、統括者に対しても請求できます。

加入者の利益確保をより確実にするための規定です。

損害賠償・違約金の制限

中途解約された場合、連鎖販売業を行う者は、ケースに応じて定められた上限額を超える金額を、加入者に対して請求できません。事前に損害賠償額の予定や違約金について定めた特約があったとしても、それが法定上限額を超えていたなら、超えた部分は無効になり、法定上限額に制限されます。法外な解約料などを請求する行為を防止する趣旨です。

あくまで上限を定めたものです。この上限額全額を請求する権利を、連鎖販売業を行う者に与える規定ではありません。たとえば法定上限額が3万円になった場合、連鎖販売業を行う者が5万円を請求してきても、3万円だけ支払えば足ります。逆に1万円を請求してきた場合、それは法定上限額内の妥当な請求と評価され、1万円だけ支払えば足ります。3万円払わなければいけない訳ではありません。

損害賠償・違約金の法定上限額

マルチの中途解約に伴い、連鎖販売事業者が請求可能な損害賠償・違約金の法定上限額は、ケースに応じて次の通り定められています。

商品またはサービスの提供

  1. 契約の締結および履行のために通常要する費用
  2. 法定利率による遅延損害金

商品の引渡し

  1. 契約の締結および履行のために通常要する費用
  2. その商品の販売価格相当額(返品の場合を除く)
  3. 返品された商品に関して支払われた特定利益その他の金品
  4. 法定利率による遅延損害金

サービスの提供

  1. 契約の締結および履行のために通常要する費用
  2. 提供済みサービスの対価相当額
  3. 法定利率による遅延損害金

以下で、もう少し詳しく述べます。

契約の締結および履行のために通常要する費用

契約の「締結」のために通常要する費用としては、書面作成費、印紙税などが挙げられます。また契約の「履行」のために通常要する費用としては、代金の取り立ての費用、催告費用などがあります。「通常」要する費用ですので、業界または社会通念上の平均的金額でなければなりません。その契約のみに特別に費用をかけた場合でも、それをそのまま請求することはできません。

引渡し後の商品の販売価格相当額

中途解約が行われた時点ですでに引き渡された特定負担に係る商品の販売価格相当額については、事業者が請求可能であることを確認的に記載しています。

ただし、その商品に係る商品販売契約が解除された際(返品が可能な場合)については、その精算ルールを別に規定しているので除外されています。「購入済商品の返品」をご覧ください。

返品された商品に関して支払われた特定利益その他の金品

「返品された商品」に関してですから、特定利益などを得てなおかつ商品が返品可能な状態である場合、つまり特定利益を得るために、自分が自分に対して販売した形をとったような場合です。また、まれな例ですが、商品購入と同時に特定利益が支払われる形態があります。これらの場合は、得られた特定利益は返還する必要があります。

「特定利益その他の金品」とは、連鎖販売業に係る商品の購入により連鎖販売加入者に提供される利益のことです。

なお、商品を他者に再販売して返品可能な状態にない場合は、当然に適用除外となりますので、得られた特定利益を返還する必要はないと考えられています。

提供済みサービスの対価相当額

連鎖販売契約の中途解約が行われた時点で、その連鎖販売契約にもとづきすでに提供されたサービスの対価相当額については、事業者が請求可能であることを確認的に記載したものです。5回の研修のうち1回だけ受講して中途解約した場合は、受講した1回分は支払う必要があるという意味です。

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