消費者契約法からも漏れる場合は、民法を活用!
クーリングオフの行使が困難で、消費者契約法の適用からも漏れるような場合は、民法による解決を模索します。
実際問題、業者と直接交渉になるでしょう。
クーリングオフ期間が過ぎてしまったり指定商品制から漏れたりする場合、販売方法に消費者契約法で規定するような問題点が見つからない場合、消費者契約とはいえない場合などが考えられます。民法はご存知の通り、市民生活における市民相互の関係を規律する私法の一般法です。クーリングオフや消費者契約法の要件に該当しない契約でも、だいたい民法の適用は受けます。
民法の適用を検討するのは、具体的には次のようなケースです。以下でそれぞれ説明します。
- 法定代理人の同意を得ない未成年者の取引
- 意思能力の欠如による無効
- 錯誤無効(勘違いによる無効の主張)
- 詐欺による取消
- 強迫による取り消し
- 公序良俗違反
未成年者の取引
未成年者が法定代理人の同意を得ないで締結した契約は、取り消すことができます。未成年者とはもちろん20歳未満の人です。法定代理人とは、通常は親権者です。親権者がいない場合は後見人がいるはずですので、その後見人が法定代理人となります。クーリングオフや消費者契約法による取り消しの要件を満たさない場合、契約当時者が未青年ならば、法定代理人の同意を得ていないことを理由に契約を取り消すことを検討します。
例外があります。次の場合は、未成年者の取引であっても、成年者と同等に扱われます。
- その未成年者が婚姻している場合
- 自由財産(お小遣いなど)の処分行為に当たる場合
- 営業を許された未成年者の営業の範囲内の行為 (たとえば高校生社長が取引先と売買契約する場合など)
一方で、未成年者保護という立法趣旨や事業者との情報格差、交渉力格差の存在という実態から考えて、より未成年に有利な解釈をすべきという主張もあります。その考えに立てば、法定代理人の同意の有無については事業者側に相応の注意義務があると解することになり、たとえば未成年者が単に年齢を偽ったとか、同意を得ていると嘘をついたとか、同意書に勝手に署名捺印したといった程度の行為は、詐術と解するべきでないという結論になります。
商品や代金を互いに返還する義務についてですが、未成年者による取引が民法の規定により取り消された場合、未成年者は「現に利益を受ける限度」で返還すれば足りると定められています。「現に利益を受ける限度」というのは、現在手元に残っている分だけ、という意味です。たとえば健康食品10パックを購入して、取り消すまでに4パック消費していた場合、残った6パックだけ返還すれば足り、消費した4パック分の代金は清算の必要はありません。一方事業者側は、受け取った代金全額を返還する義務があります。
意思能力の欠如
認知症患者や高齢者が被害に遭った場合に、無効を主張できるかどうか模索してみます。意思能力とは、自分の行為がどういう結果になるかを判断できる能力です。事例ごとに個別に判断されますが、通常人だと、だいたい満7歳程度の知能があるかどうかが目安となります。この意思能力を欠く人が締結した契約は、無効とされます。
ただし、立証が困難です。意思能力の欠如を理由に契約の無効を主張する場合、ある程度時間が経過して問題が発覚することが多く、契約時点で意思能力が欠如していたかどうかを立証するのは難しいし、判例も意思能力の欠如については厳しい判断をしてきています。
むしろ、錯誤無効や公序良俗違反による無効、詐欺による取消の方が主張しやすいケースが多いでしょう。
錯誤無効(勘違いによる無効)
「錯誤」とは、表示の内容と内心の意思との不一致を表意者自身が知らないこと、というのが判例によって定着した定義です。「10個」と書くべきとことをうっかり「100個」と書いてしまったとか、新品だと思って買ったら中古品だったとかいう場合に用いられる法律用語です。要は「勘違い」のことです。消費者問題に絡めていうと、たとえば節電システムの契約で、事業者の説明のような効果がなかったとか、旅行会員サービスに入会したつもりが、実は英会話教材の契約だったとかいう場合が当てはまるでしょう。その取引の重要な部分に錯誤があった場合、無効となります。
「取引の重要な部分」とは、たとえば、契約目的物が異なっていたとか、説明されたような効果がなかったとかいう場合は、重要部分といえるでしょう。
錯誤の程度は、もしその錯誤がなかったら契約しなかったであろう程度の重要性であることが必要とされます。ただし、錯誤に陥った当事者に重大な過失がある場合は、無効を主張できません。
動機の錯誤は、無効の対象としないのが通例です。動機とは消費者契約などの場合、「それを買おう」と思う直接の原因です。「旧式の電話機はまもなく使えなくなる」「消火器の設置が法律で義務付けられた」から最新の電話機や消火器を買おうとする場合、これらの理由に当たる部分が動機になります。これは契約商品そのものや契約条件などに関する部分とは異なり、契約を必要とする事情に関する部分です。判例では、動機の錯誤で無効を主張することはできないとされています。ただし、その動機が表示され、契約の相手方が動機の錯誤に陥っていることを知っている場合は、錯誤無効を主張できます。
動機の錯誤は消費者契約などの場合、事業者の欺瞞的なセールストークによって陥るケースが多いと思われます。その場合、動機は表示されているし、事業者側は消費者が動機の錯誤に陥っていることを当然に知っている訳ですから、事実関係さえ明確に立証できれば、錯誤無効は認められるようです。ただ、被害者が認知症などの理由で正常な判断能力を有していない場合は、この立証も困難になります。そんなときは、別記事で述べる「意思無能力による契約の不成立」を主張できるかどうか、検討してみます。
詐欺による取消し
詐欺によって締結された契約は、取り消すことができます。民法上、詐欺による契約を取り消すには、以下の要件に該当する必要があります。- 事業者に、相手方をだまして契約を取ろうという意思があること
- 実際にだまそうとする行為があったこと
- その行為によって相手方が錯誤に陥ったこと
- その結果として、契約締結に至ったこと
事業者側に「故意」が必要です。特定商取引法や消費者契約法では、販売担当者の意思とは無関係に事実と異なる説明をしたら「不実告知」に該当しますが、民法では、要件のひとつとして「だまして契約を取ってやろう」という意思を求めています。大きな相違点のひとつです。
「実際にだまそうとする行為」は、社会的に違法と評価できる程度のものである必要があります。最近は見かけなくなりましたが、露店でのバナナの叩き売りの口上程度のものでは、「だまそうとする行為」とは認められません。
詐欺によって陥った錯誤の場合は、錯誤無効の項で述べたような「取引の重要な部分」である必要はありません。虚偽の説明であることがわかれば、通常なら契約しなかっただろうと判断されれば、取消は可能だと考えられています。
強迫による取消し
強迫によって締結された契約は、取り消すことができます。民法上、強迫による契約を取り消すには、以下の要件に該当する必要があります。- 事業者に、相手方を強迫して契約を取ろうという意思があること
- 実際に強迫する行為があったこと
- その結果として、契約締結に至ったこと
「強迫」とは、人を脅して恐怖心を抱かせるような行為をいいます。刑法でいう「脅迫」つまり相手の意思を抑圧して判断の自由を奪うほどのものである必要はありませんが、社会通念上違法と評価しうる行為であることが必要とされています。消費者契約などに関して強迫による取消しを認めた判例がなかなか見つからないので例示が困難なのですが、たとえば、
- 体格がガッシリした販売担当者が一人暮らしの老女宅に上がりこみ、声を荒げたりする訳ではなかったが長時間勧誘を続けて困り果て、契約してしまった
公序良俗違反
「公序良俗」とは、「公の秩序、善良の風俗」の略称で、正義や道徳、人倫を内包した言葉だと、一般には説明されています。公序良俗に反する法律行為は、無効です。消費者契約などの場合、消費者側に著しく不利な内容だったり、取引の構造そのものに詐欺的要素がある場合など、契約内容それ自体が全体として違法性が高い場合は、公序良俗違反を理由に契約を無効とする道も検討できます。ほとんど価値のない土地を時価の20倍以上の高値で売りつける原野商法や、詐欺的な利殖商法などで、公序良俗違反による契約の無効が認められた判例があります。
ただこのような悪質な事業者の場合、短期間に荒稼ぎした後に、会社をつぶして逃げてしまうといったケースが多く見受けられます。このような場合、支払を済ませた後に契約無効を主張しても、会社が支払能力を失っているので実質的な救済にはなりません。支払前に無効を主張する分には意味があるでしょう。
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