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クーリングオフの例外

訪問販売や電話勧誘販売に該当したとしても、以下の場合は、クーリングオフその他の規定が適用除外になります。

すべての規定が適用除外

以下に該当すると、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関するすべての規定が適用除外となります。

営業として、もしくは営業のために締結するもの

営業目的の取引は、原則として適用除外となります。特定商取引法は消費者契約(つまり個人と事業者との間の契約)を主な対象としています。その理由は、事業者側はその道のプロであるのに対し、もう一方の契約当事者である消費者は、たいていは素人であり、商品知識、専門知識、交渉力において圧倒的に不利な立場に置かれるのが通例だからです。

ですから、事業者間取引ならプロ同士なのだから、適用を除外しても問題はないだろう、というのがこの例外規定の趣旨だと思われます。

しかし「営業として、または営業のため」でない取引については、事業者間取引でも情報格差、交渉力格差が存在するケースがありえます。

そういうケースは、依然として法の適用対象とされました。

※個人事業主でも「適用除外」が「除外」

たとえば最近、高齢の個人事業者を狙った高額電話機の訪問販売が頻発していますが、仮に事業者名義で契約していても、電話機の使用実態が主に個人使用にとどまっていれば、法の適用対象となります。

※法人契約でも適用の可能性

また個人事業者に限らず、法人でも適用対象となる場合があります。訪問販売の裁判例ですが、自動車販売会社が訪問販売業者と締結した消火器の薬剤充填契約について、クーリングオフを認めたという事例があります(大阪高裁平成15年7月30日判決)。自動車販売会社にとって消火器の点検整備は「営業として、もしくは営業のため」の契約ではないと判断されました。

ただしこれは、裁判を通して勝ち得た結果です。稀な例だということは、申し上げておきます。

海外にある者に対する商品、権利の販売、サービスの提供

日本国内での取引に適用対象を限定しています。訪問販売ではこの規定が問題となることは、まずないでしょう。むしろ通信販売の規定が適用除外となることに対し、疑問視する意見があります。インターネットの普及により、海外在留者が日本の業者とネット取引するような場面が増えてくることが予想されるからです。

国や地方公共団体が行う販売またはサービスの提供

消費者保護という法の趣旨に照らし、特に問題はないだろうということです。あくまで国や地方公共団体そのものであって、公が出資する法人などは含まれません。

生協、農協、共済組合、労働組合が、その構成員と行う取引

組合内部の自治を尊重する趣旨で、適用除外とされています。

事業者がその従業員と行う取引

社内販売が典型例です。これも事業者内部の問題として、適用除外とされています。

その他

  1. 株式会社以外の者が発行する新聞紙の販売
  2. 弁護士の業務
  3. 次に掲げる販売又は役務の提供
    金融商品取引法、宅地建物取引業法、 旅行業法、その他

ほとんどの規定が適用除外

以下に該当すると、訪問販売に関する規定のほとんどが適用除外となります。適用されるのは、氏名等の明示義務だけです。

  • 住居での取引を自ら事業者に請求した場合
  • いわゆる「御用聞き」や「得意客訪問」など政令指定の4形態
    1. 定期的に住居を巡回訪問している事業者と行う取引(御用聞き)
    2. 店舗事業者と、過去1年以内に1回以上正常な取引がある場合
    3. 無店舗販売者と過去1年以内に2回以上正常な取引がある場合
    4. 事業所の管理者が書面で認めた、事業所内での販売やサービス提供

経済産業省によると、特定商取引法は本来、押し付け販売的なものから消費者を保護するのが目的ですが、以下のケースはそういった要素がなく、よって日常生活の中で支障なく行われている同様の形態の取引まで規制対象とするのは無用な混乱を招く、というのが適用除外の趣旨です。各項につき、以下に説明します。

住居での取引を自ら事業者に請求した場合

購入者の側にあらかじめ購入の意思があること、またこのような場合、購入者と販売業者との間に日頃から取引関係があるのが通例だ、というのが除外の理由です。

購入者側がはっきりと購入の意思を示すことが必要です。日頃から付き合いのある近所の電器屋さんに「冷蔵庫が故障したので買い換えたい。来てほしい」と電話で依頼した場合など、依頼者側の購入意思がはっきりわかるなら、ここで言う適用除外に該当します。

はっきり「買う」とは言わなかったものの、「商品の説明を聞きたいから来てほしい」とか「カタログを持ってきてほしい」などと事業者に依頼した場合については、明確な線引きがまだ確立されていないのが現状です。

経済産業省は、自ら依頼した場合は取引の意思が認められるとしています。ところが、事業者の方から「ではお伺いして説明しましょう」などと提案を受け、購入者側が承諾した場合はこれに当たらない、という見解です。

これについては基準があいまいという批判があります。実際に購入する意思があったかどうか、それとも購入を検討する段階にとどまっていたかどうかが判断の分かれ目だといえるでしょう。

商品Aの購入を意図して訪問を求めたのに、事業者の勧めで商品Bを買ってしまった場合は、適用除外となりません。商品Bについては、あらかじめ購入の意思があったとはいえないからです。

場所は住居に限定されています。自ら事業者に請求したとしても、喫茶店や駅の改札などに呼び出した場合は、含まれません。

いわゆる「御用聞き」や「得意客訪問」など政令指定の4形態

営業所等以外の場所で取引するのが通例で、かつ通常購入者側の利益を損なうおそれがないと認められる取引の態様であり、なおかつ政令で指定されているものを指します。いわゆる御用聞きやお得意様への訪問など以下の4形態が政令で指定されています。

定期的に住居を巡回訪問している事業者と行う取引(いわゆる御用聞き)

店舗事業者が定期的に住居を巡回訪問し、勧誘を行わず、単に申し込みを受けたり契約締結の請求を受けたりする受動的な取引形態を指します。地域の酒屋さんや電器屋さん、雑貨屋さんが行うような、いわゆる御用聞きが想定されています。「ちわぁ~っ、●●屋で~す」「アラちょうどよかった。いつもの醤油を一升お願いね」といった取引形態です。

日常的に営業活動を行っている店舗が実在することが要件となります。

店舗事業者と、過去1年以内に1回以上正常な取引がある場合

店舗事業者が、顧客に対して訪問し取引する場合は適用除外となります。ここで言う「顧客」とは、その訪問の日前1年間に当該事業に関する商品なりサービス提供の取引があった人に限られています。

店舗という信頼の基礎を有し、この店舗を通じても取引関係があるのが通常なので、両者の信頼関係は比較的強いと考えられるのが、除外の理由です。

「取引があった」とは、正常な取引を指します。いったん契約は締結したものの、後日クーリングオフが成立した場合などは、ここでいう取引とは認められません。信頼関係が成立しているとはいえないからです。

過去1年内の取引は「当該事業に関する」ものでなければなりません。たとえば過去1年以内に宝飾品の取引があった事業者から、今度は健康食品の取引をするといったケースは適用除外にならない、という意味です。宝飾品事業については信頼関係はできていても、健康食品事業については未構築だと思われるからです。

無店舗販売者と過去1年以内に2回以上正常な取引がある場合

店舗事業者と同様の趣旨で、「無店舗」事業者の顧客訪問は適用除外となります。条件となる取引実績が店舗事業者より多い「2回以上」とされたのは、店舗がない分信頼の基礎を欠くことになり、両者の信頼関係構築には店舗事業者よりも取引実績が多いことが必要と考えられたからです。

1回の訪問で2件の契約を取ったというケースは、この適用除外対象には当たらないとされています。

事業所の管理者が書面で認めた、事業所内での販売やサービス提供

会社の会議室や通路の一角を借りて、その社員向けに販売を行うケースが想定されます。このような場合は適用除外となります。

事業所の管理者が、書面で承認を与えることが条件となります。管理者とは、他の事業者が社内に立ち入って販売することを許可する権限を有する人のことです。一般的には総務部長とか管理課長とかの役職に就いている人が該当することが多いようです。

※次々商法は「取引実績」か

購入者の断りきれない性格につけ込むなどして、高額商品の購入を次々に契約させる事業者の手口は、「次々商法」とか「多重販売」とか呼ばれています。最近では身寄りのない高齢者を狙った「悪質リフォーム」が社会問題になりました。法の適用除外規定に照らすと、このような悪質な手口が「お得意様訪問」に形式的には該当してしまうように見えます。

しかし本条項の趣旨はそもそも「押し付け販売的なものではなく」「日常生活の中で支障なく行われており」「購入者の利益を損なうおそれがない」取引を適用除外とするものです。次々商法はこれらの条件をすべて満たしていません。判例も、次々商法の場合は適用除外とならない旨の判断をしています。

また、訪問販売による取引でしたら、過量販売の規定ができました(2009年12月1日施行)。

書面交付義務とクーリングオフ規定が適用除外

以下4項目は、書面交付義務とクーリングオフの規定が適用除外とされています。

  1. いわゆる海上タクシー
  2. 飲食店において飲食をさせること。
  3. あん摩、マッサージ又は指圧を行うこと。
  4. カラオケボックスにおいてその施設又は設備を使用させること。

たとえば、飲食店の客引きは形式上キャッチセールス(訪問販売の一種)に該当する可能性があります。しかもその場で飲食と支払(債務の履行)が完了するのが通例です。

そのような性質の契約で、注文ごとに契約書を交わしたり、クーリングオフを認めては、取引の実態に合わないという制度趣旨です。

クーリングオフのみ適用除外

以下に該当すると、クーリングオフができる旨を定めた条文の規定が適用除外となります。ただし適用除外となるのはクーリングオフの規定のみです。つまりクーリングオフができない以外は、訪問販売に関する他の規定(氏名の明示義務や書面の交付義務など)は適用されます。

  1. 乗用自動車および自動車の貸与(リース)
  2. 政令指定消耗品を使用または消費したとき
  3. 総額3,000円未満の現金取引
  4. 電気、ガス、熱供給事業、葬儀

各項目について、以下に説明します。

乗用自動車

販売条件についての交渉が販売業者と購入者との間で相当期間にわたり行われることが通常の取引形態であることが、条文上の理由です。

また、新たな取引形態として登場した自動車のリースが、2009年12月1日施行の改正法で追加されました。

なお、二輪は乗用自動車には含まれません。

政令指定消耗品を「自ら」使用または消費したとき

使用したり一部を消費したりしたら、その価額が著しく減少する恐れがあるとされる消耗品が8項目ほど、政令で指定されています。それらを政令指定消耗品といいます。それらを購入者が自ら使用または消費した場合は、期間内でもクーリングオフできなくなります。例外規定もあります。詳しくは、政令指定消耗品のページに記載してあります。

総額3,000円未満の現金取引

訪問販売で、その場で取引が完結した場合、つまり商品が引き渡され、あるいは権利やサービスの移転・提供がすべて終了し、なおかつ代金全額が事業者に支払い終わった場合、その総額が3,000円に満たないならば、クーリングオフができません。

商品や権利・サービスの提供と代金の支払いの双方が、余すところなく終了していることが条件です。代金の一部を後日支払ったり、逆に商品や権利・サービスの一部が後日の提供となった場合は、この規定は適用されません。

クレジットカードやデビットカードによる支払いの場合もこの規定から外れます。事業者が金銭を受領するのは後日となるからです。

「総額3,000円未満」とは、消費税込みの価格です。

電気、ガス、熱供給事業、葬儀

他の法律で供給義務が課せられている場合や、速やかにサービスを提供しないと消費者に著しく不利になるものとして、2009年12月1日施行の改正法で、クーリングオフの適用除外となりました。

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